別荘は門から邸まで美しい並木道になっており、せっかくなので馬車を下りて歩くことを望んだほどだった。

「もちろんかまわないさ。ずっと馬車に座りっぱなしで体が凝ったから、伸ばすのにちょうどいい」

というわけで、邸までの道を二人でゆっくりと歩いた。
美しい日だった。陽の光ににじむ頭上の緑が、テスの白いワンピースを淡い翡翠(ひすい)色に染める。

森を背に建つギュスターヴ家の別荘は、さほど大きくはないが、歳月を経てきた趣のある建物だった。
質実な雰囲気がテスの気に入った。

玄関ホールでは使用人が勢揃いして二人を出迎えてくれた。
早くも女主人のような扱いだ。

使用人の雰囲気はおしなべて、洗練より素朴といったところで、テスは内心安堵していた。

「お疲れでしょう、ゆっくりなさってください」
とふくよかなメイド頭が、ティールームにたっぷりのお茶とお菓子と軽食を用意してくれた。
どこかベッシーにも似た雰囲気で、テスはこの邸に自然と親しみを感じることができた。