「僕らの曾々祖父さんが本当のところどう思っていたのかは、もはや分からない」
リランはあっさり言った。

「とはいえわずかに遺された日記には、足の悪い弟のことを気遣う言葉が書かれていたそうだし、リベイラ家と交わした手紙も保管されている。
何より彼は事業で成功して、子孫である僕らもその恩恵に浴しているんだ。リベイラ家に遺恨なんてあるわけないさ。
現に僕の父は、一人息子である僕を喘息の療養のためにヒースクレストに預けたくらいだ」

彼の言葉になんら含むところはなさそうだった。

気になったので「そういえば、あなたの喘息はもう大丈夫なの?」と問う。

「おかげさまで、成長期を迎える頃には虚弱体質も改善して、今じゃ健康そのものだ」

リランは唇の端を少し曲げた。
体が弱かった少年時代のことを言われると、自尊心が傷つくのだろうか。
彼がもう喘息の発作に苦しめられることがないと知って、テスは素直に嬉しかった。