背が高いので、人の波間からアッシュブラウンの髪がひょこひょことのぞいている。

記憶のなかのリランは、庭園の風景に溶けこんでしまいそうな繊細な印象の少年だったけれど———
人々の切間に彼を見た。

リラン・ギュスターヴ。
精悍な面差しの青年がそこにいた。
整った外貌をしていると、誰もが認めるだろう。思わず視線を惹きつけられる。

アーモンド型の瞳、通った鼻梁、厚みのある唇は完璧なカーブを描いている。
前髪がさらりと落ちかかる額から引き締まった顎までつづく輪郭のなかに、それらのパーツがバランスよく収まっているのだ。

隣に立ってリランとときおり視線を交わしているひょろりとした巻き毛の青年が、フロックという友人だろう。
友人を伴ってくるとは、なにか意図があってのことなのか。

と、リランが何かに気づいたようにこちらに視線を投げてきた。
糸を張ったように、視線がぴたりと結ばれたような錯覚もつかの間、すぐに人の背にさえぎられた。

「ねえ、彼、テスのことを見てたんじゃない?」
とアイダが囁いてくる。

「たまたまなんでしょうけど…」