「はぁ…まったく──」
けど、自分のことですら鈍感なヤツに俺の気持ちを気づけって言う方が無理な話なのかも。
「あっ!そんなことよりもお前、明日の準備はできてんだろうな?」
「えっ?明日って……」
「バカッ!練習試合の準備だよ」
「完全に忘れてた。レモンとか買ってないし!陸、ちょっと一緒に買い物に付き合って」
「なんで俺まで行かなきゃいけねぇんだよ。てか、俺 疲れてるからお前1人で行けよ」
「いいから早くっ!!」
半ば強制的に俺の腕に自分の腕を絡ませ、愛理が家とは逆方向に小走りで歩き出した。
「早く行かなきゃ、レモンが売り切れちゃう!」
「レモンが売り切れるなんて聞いたことねぇし!ったく…俺 関係ねぇじゃんか」
1つのことにしか集中できないから、大事なことを忘れんだよ。
今の状態なら、もう1人マネージャーが増えて…ちょうど いいかも。
この時は、ただ素直にそう思ったんだけど──・・・