「じゃあ、一緒に行くかい?」
 アンドレア様の提案に深くうなづく。
 
 私とアンドレア様は、学園を卒業した後北のルーベ伯爵領の中央魔法研究所へと行くことが決まっていた。
 学園在学中の魔法研究発表のレポートが認められた形だ。
 魔力が強く大きな魔法が使える者は、国の魔法省へと就職する。
 魔力が弱く小さな魔法しか使えない者は、魔法を仕事にしないのが普通だ。
 だけど、私やアンドレア様のように、魔法が大好きで仕事がしたいという者がルーベ伯爵領の中央魔法研究所に職を求めるのだ。
 入所資格は、学園を卒業した者であること。魔法の基礎はそこで学ぶからだ。それから、在学中に研究発表をし内容を認められること。これがそれなりに難関で、中央魔王研究所に入れるのは、数年に1人と言われている。
 私とアンドレア様、同じ学年で2人も入所者が出るのは本当にまれな出来事らしい。
 ちなみに、入所に当たって親の許可などは必要がない。
 学園を卒業するということは、独り立ちする年齢に達したということだ。
 子供の養育義務は、学園を卒業させることで終わる。
 親は子供の養育を続けるか、家から追い出し一切関わらないか選択することができる。
 ……この決まりは、ごくつぶしの子を追い出すために過去に作られたものだが、今では家を出たい者たちの心のよりどころになっている。
 が、現実問題として、学園に通うような立場の人間がいきなり一人で生活するというのは非常にハードルが高く、ほとんどはそのまま家の世話になり親の言いなりになるしかない。
 女性であれば、そのまま政略結婚して嫁いだ先の言いなりだ。
 家督を継ぐ者は家を出ることはないし、家の名を捨てたくない者たちもまた、何らかの仕事を得つつ完全に独立をすることは少ない。
 そういうわけで、古くに定められたこの決まりは、大した混乱も招くことなく今もなお残されていた。
「ところで、シャーラは研究所に入ったあとはどうするつもりだい?」
 二人で講堂に向かいながら会話を続ける。
 華やかなドレス姿や正装した人たちの邪魔にならないように廊下の壁際をひっそりと歩く。
 いつもなら、それで目立たないで済んでいるのに、今日ばかりはむしろ制服を着ていることで悪目立ちしていた。
「あら、あれはハズレ王子とゴミ令嬢では?まさか制服で出席するつもり?」