「とにかく、私が辛い思いをしてたことは事実だってわかってもらえればいいわ。お義姉様に虐められていたと私が言っても、それは嘘よなんて言えないわよね?」
 虐め?
 私は虐めてなんか……。
 いえ、間接的に辛い思いをさせていた。そして、それに気が付かなかったのだから、虐めていたようなものなの?
「私がお義姉様を馬車にの載せないという虐めを行っていたのではないわ。お義姉様が私が虐めているように見えるよう自ら歩いて学園へ通っていたの。私が陰口を言われる姿を見て笑っていたの。それが事実」
 ……義妹の言葉に何も言い返すことはできかなった。
 馬車が学園に到着すると、すぐに馬車に5人の男性が近づいてきた。
 皆、普段の制服とは違い立派な正装姿だ。
 一人は長身の美麗な、騎士団長の息子。
 一人はクールビューティーと言われる、宰相の息子。
 一人はまばゆい美貌の留学生である、隣国の第三王子。
 一人は色気溢れる、筆頭公爵家嫡男。
 そして、もう一人。彼ら4人を従えるように一歩前に出ているのは。
 この国の第一王子。容姿端麗頭脳明晰皇太子である。
 
 馬車の扉が開くと、エスコートするために皇太子が手を差し出した。
 ……もちろん、私をエスコートするためではないため、慌てて馬車から転がり落ちるように降りて距離を取る。
 皇太子が不快そうに顔をゆがめた。
「今日という日に制服?」
 私の後から、皇太子にエスコートされて馬車から降りたマリアーナが悲しそうな顔を見せる。
「……また、いつものですわ……。お義姉様が不快にさせてしまい申し訳ありません……」
 マリア―ナの言葉に、騎士団長の息子がゴミ虫を見るような眼を私に向けた。
「はっ、いつもの、虐げられているごっこか!卒業式までふりを続けるとは。豪胆だなっ!」
 それに続いて宰相の息子が口を開く。
「殿下の出席する栄えある卒業式を台無しにした罪で処罰しては?」
 え?制服での出席は認められているのに処罰……?
 一瞬ぎくりと身を固める。
 そんな私の目に、制服姿の猫背の生徒の姿が目に映った。
 ほっと息を吐き出す。
「馬鹿が、あいつも制服かよ!制服で出席することを理由に処罰は見送るしかないな」
 公爵令息の悔しそうな声が聞こえる。