「筋肉は正義?なわけないわよね。暇さえあれば体を鍛えるとか言って、鍛えるのは構わないけどね、くさいのよっ!汗臭い。体を動かせば汗をかくわよね?周りにいる人間が汗の臭いに迷惑してるとか考えたこともないんでしょうね?四六時中暇さえあれば訓練、それって、四六時中汗臭いってこととイコールよ。ほんっと、近寄ってほしくなくて、体を寄せてきたらそれ以上近づいてほしくなくて胸に手を当ててただけよ。すごい筋肉ですねぇってごまかしながらね!」
 ……そういえば、義妹は人よりお少し鼻が敏感だった。だから他の人のように強い香水はつけていなかったのよね。……そこが清楚だなんて言われていたようだけれど。
 ちなみに私は、香水は持っていなかった。持っていたとしてもあまり使いたいとは思わない。こういうところは義妹と気が合ったかもしれないな……。
「それに、女を守ってやらなくちゃならないからな。それが騎士の役割だって、立派なこと言ってるけどね、あんたのは、女を守ってどや顔したいだけってのが透けて見えてんのよ!どうせ、助けたい女は助けるけど、どうでもいい女は見捨てるんでしょ?そもそも、女だけじゃなくて、騎士ってのはさ、女だけじゃなくて男も子供も、すべての人を守らなきゃだめなんじゃないの?下心しか見えないのよっ!」
 ……騎士団長息子から視線をそらしている人がいるけれど、それはどういう意味だろう。
「それから」
 義妹が、今度は筆頭公爵家嫡男へと視線を向ける。
 勢いは止まらない。
「私が強欲ですって?そうね。確かにいろいろと買っていただいたわ。店に入ったからには、何も買わずに出ていくなんて店の人に失礼だもの。そういう配慮がないのよね。庶民の使う店など我々貴族が買うような品はないって決めつけてるものね?そりゃ、確かにそうとも言えるけど。だったら、初めから庶民の店が立ち並ぶ場所になんて行かなければいいのよ。何が視察だ。庶民の暮らしを下に見て馬鹿にするのを視察なんていうわけ?はっきり言って、一緒にいて、だから貴族はって憎しみの目で見られるのはうんざりなのよっ!だから一目が避けられるように店の中に入ってたの。私だって、あんな安物なんか買ってもらったって全然嬉しくないわよっ!それなのに、買ってやったって恩着せがましくしやがって!」
 義妹は早口に次々と言葉を発していく。