アンドレア様がくいっと顎で指した方向に目を向ける。
 美女へと変身したトリアンナ様が動いた。
 見ていられないと真っ先に助けようと動くんだ……。
 私は、血がつながってはいないけれども、それでも家族である義妹が責められていることに心が苦しくなって周りが見えていなかった。
 よく会場を見渡してみれば、美男美女は義妹を責め立てる輪には加わっていない。何とかしたいけれどなんともできないというジレンマなのか悔しそうな表情をしている。
 そりゃそうだ。相手は殿下たちなのだ。
 そして、私やアンドレア様のように凡庸な容姿が凡庸なままの人間は、ただこの状況を見て立ち尽くすばかり。
 義妹を責める者ばかりではない……とは分かったものの。いくらトリアンナ様が何とかしようと思ったって、一緒になってせめらっるだけになりそうだ。
 やっぱり、何とかしなければ。
「ねぇ、アンドレア様。魔道具で何かこの場を納められるようなものがなかったかしら?」
「あ?えーっと……そうだね、興奮を抑える作用のあるオルゴールとか、他にもいくつか思い浮かぶけれどあいにくと講堂にはないし、取りに行くわけにもいかないんじゃないか?」
 そういえば、講堂から誰も外に出ていないけれど、出られないのだろうか?出ちゃダメって言われたわけではないのに、不思議と皆逃げ出そうとしていない。
「ふざけるんじゃないわよ……」
 小さいけれど、どすの聞いた声が義妹から発せられた。
「レインドル様、分からないと話題をそらす頭が空っぽな女って言ったわよね?空気読まずに、わけの分からない話を続けて何度場を白けさせてるか自覚ないの?人の顔見なさいよ。誰も興味がない話を、知識マウント取るかのように延々と続け、分からないって顔してる人間を見下すような男よね、あんたさ。また始まったってみんな思ってるわよ。そのうえで、よくご存じですね、教えてくださいってご機嫌取ってるだけって、早く気が付けば?ほんとの馬鹿は、知識がない人間じゃないわよ、あんたみたいに自分は賢い、他の奴らとは違うって勘違いしてる男がバカなのよっ!その性格の悪さが、顔にしっかり出たものね!はっ!」
 宰相の息子がぐっと言葉に詰まる。
「それに、あんたも。私をアバズレだ?」
 今度はマリアーナは騎士団長の息子に目を向けた。
 義妹は両手の平を上に向けてはっと声を出す。