「じゃあ、年を取り皺クチャになったあなた方のお母様たちは、年々心が醜くなっているということですわね?王妃教育に口うるさくなるのは、若くて美しい女性に嫉妬しているということになるわよね?それは歴代の王妃殿下に対する不敬ではなくて?」
 ぷっ。
 思わず吹き出しそうになった。
 確かに、醜い女は心も醜いなんていう言葉でくくってしまえばそうなる。年を取れば若かったころの美しさはどうしても減っていくのだから……。だからこそ、若返りの薬だとか不老の薬だとかを手に入れたくて必死になる人も多いんですけど……。闇魔法で時を操るものがあるということが本に書いてあったけれど、使い手を見つけて研究に協力してもらえれば、もしかしたら出来上がるかもしれないと思ったことはある。
「うっ、そ、そうじゃない。すべての女性がという話ではないっ」
 殿下は流石に言葉に詰まった。
「まぁいいわ。もう一度確認するわ。その女のどこが好きなの?顔?心?」
 醜悪魔女の言葉に、殿下は胸を張った。
「もちろん、思いやりのある美しい心だ!」
 醜悪魔女は義妹にも尋ねる。
「あなたは?殿下の何が好きなの?皇太子の地位?顔?心?」
 義妹が答えた。
「も、もちろん、心ですっ。殿下は、お義姉様に意地悪され、いろいろな人に陰口を言われる私を慰めてくださったのです。その優しい心を好きになったのですっ」
 醜悪魔女が手を前に出すと、赤い液体が入った小瓶が現れた。
「じゃあ、あなたたちに使った魔法薬について説明させてもらうわ」
 赤い液体は、私たちの上に雨のように降らせたもの?
「この魔法薬は、触れた者だけに効果が現れるだけでなく、伝染していくのよ。つまり、この会場から外に出て人と接触すれば、その接触した人にうつるのよ。あっという間に国中に広がるでしょうね。人から人へと……。広げないためには、どうすればいいか分かるかしら?」
 伝染する?
 病気のように……?ということは、隔離しなければならないって話?
「それから、この魔法薬の中和薬は存在しないわ。現存するどんな解毒薬も解呪魔法も何も効果はない」
 病気なら時間が立てば自然に治ることはある。でも、解毒薬や解呪魔法が必要だということは……自然に効果が無くなることはないということよね。
 会場の人間は、醜悪魔女の説明をおとなしく聞いていた。