俺は、平然を装いながらそう答えた。
ちっとも内容が頭に入ってこない、先生のホームルーム中。
俺は隣のクラスの百合の事ばかり、気になって考えていたから。
ーーあの日、百合は、自分の正体が悪魔にも関わらず、猫のユキを助ける為に、俺に姿をさらした。
百合が、“悪魔”であることには正直ビックリしたけれど。
本当に驚いたのは、あの百合が最後、涙を零して笑っている表情を見た時。
それと、あの言葉を聞いた時。
『今まで、ありがとう……、真雪くん』
幸い、天気が雨で道には人が歩っている姿はなく、トラックの運転手も何が起きたのか理解できてない様子だった。
だから、百合が“悪魔”だって知った者は俺ひとりで済んだ。
でも、百合のあの様子だと、人間共に正体がバレたと思い込んでいる。
俺は、百合の親友である中保に事情を説明した。
さらには、『百合が学校を休んでいる間、肺炎で入院していることにしてくれ』とも頼んだ。
その効果があって誰も百合を怪しむ人は今のところいない。