古い祖先に悪魔がいて、私はたまたまその血をちょこっともらってしまっただけで。
でも、人間の学校へ通うのなら、なるべく平穏に暮らしたい。
私が“悪魔”だと知ったら、当然みんな気味悪いと思うに決まってる。
だから、絶対にーー、ナイショにしている。
先生が来る、ホームルーム前の時間。
「百合、私、カレシできたから」
「……へ?」
突然の言葉に私はポカンとする。
今、私の机の目の前に座っているのは、唯一の親友で、私を“悪魔”だと知っている、中保 亜萌《なかほ あも》ちゃん。
黒髪ボブのサバサバ系女子で、美人さんだ。
「かかか、カレシって、いつの間に……っ!?」
「昨日。部活帰りに突然コクられてさ。私も前々から気になってた人だったからオーケーしたの」
亜萌ちゃんは手鏡でリップをつけながら説明してくれた。
「そうなんだぁ、よかったねぇ! おめでとうっ……!!」