すると。
「あー、ほら腹減ってるならこっち食え」
……えっ!?
裏庭の木の陰に座っているのは、後ろ姿だけど、正真正銘の真雪くんだとすぐに分かった。
そして、真雪くんの腕にじゃれついているのは1匹の、真っ白な猫。
彼は慣れた手つきで、猫缶を鞄から取り出し、エサ皿にご飯をのせる。
ーーにゃーお。
猫は、夢中でガツガツと食べ始めた。
真雪くんは、優しい表情で、真っ白な毛並みの背中を撫でる。
いつもクールで無表情だけど、あんな顔もするんだーー……。
ドキン、と胸が大きく高鳴った。
そして、気づいたら足が動いていて。
「可愛い猫ちゃんだねっ……!」
思わず、声をかけてしまっていた。
「なっ、百合!?」
ーーにゃーお。
猫が今度は私の足元に顔をすり寄せて、甘えてくる。
真雪くんは、ちょっと困ったようにため息を吐いたあと。
「こいつ、1週間くらい前に見つけてな。でも、俺んちマンションだから飼えなくて」
「そうだったんですかっ、なら私が引き取ります!!」