「何でだ?」



明らかに嘘をついていない、キョトンとした様子の真雪くんに、私は言葉を続ける。



「き、キスは本当に好きな人同士がやる行為ですっ……! 私なんかの為に使っちゃいけません、真雪くんっ」



「……そうか」



あ、あれ? なんだか真雪くん悲しそうな顔してる……?



「そうだな。百合の王子様は俺じゃないしな。悪かった」



「……あ、あの」



「そういえば、百合、今日、日直なんだろ? 早く教室戻らなくていいのか?」



「あっ! 先生から日誌もらわないと……! じゃ、じゃあねっ!」



真雪くんが元気ないのは気がかりだったけれど、私は小走りで自分のクラスへ戻る。



「はぁ、俺はアイツとならキスしてもよかったんだけどな」



真雪くんがそんな独り言をしているのにも知らずに。



ーーキーンコーンカーンコーン。



先生のホームルームが終了し、私はお手洗いに行こうと思い、席を立つ。



「一期さん、ちょっといい? その……、隣のクラスの女の子が呼んでる」



「……え?」