憂鬱から、私の1日は始まる。



自分の教室に行く途中の廊下を歩いていると。



「あっ! 見て見ろよ、あれ、一期さんじゃね?」



「どれどれ!? あ~っ、本当だ! 今日もメチャクチャ可愛いな~」



チラリと目をやると、教室の廊下側の窓から身を乗り出す男子たちの姿がそこにはあった。



ーー『メチャクチャ可愛い』。



うぅ、“可愛い”だなんて……、苦手な言葉なんだけどなぁ。



第一私、そんな容姿してないし……、みんな勘違いも冗談がよすぎるよぉ。



そんなことを思いながら、足早にサッサと男子たちの目の前を通りすぎた。



私、一期 百合《いちご ゆり》。高校1年の16歳。



明るめブラウンのロング髪は、生まれつきテンパでふわふわしている。



ちなみに、私は人間ではない。



魔の力で人に不幸をもたらすーー、いわゆる“悪魔”。



見た目は丸っきり、人にしか見えないが、背中には黒い翼があり、空を飛ぶことが可能。



だけど、魔力は0パーセント。



人を呪うとか、いたずらするとか、そんな力さえもない。