「エヴァはやっぱり悪役令嬢だ。
 あいつらの心を拐ったまま、知らん顔して行ってしまう。
 あちらでも、一体何人の被害者を出すか……」


 うーん、言ってることが気持ち悪い。
 もっと普通に言って?

 テディのこう言う『俺いいこと言ったよね?』は、流すに限る。



 私は幸いなことに、愛するひとから愛されて、花嫁になる。
 それはとても恵まれていて、自分でも幸せ者だと実感してるわ。


 ただ、こうして旅立つ貴女を見たら。
 私は色んなしがらみから抜け出せない女なんだ、とも同時に感じるの。
 本当は私も貴女の様に生きたいのかも、と思うの。



 勝手にカテゴライズして、勝手にレッテルを貼ろうとする令嬢市場を、自分から飛び出すのね?


 周りからお薦めされるような優良物件から選んで貰うんじゃなくて。
 その時が来たら、自分にとっての最高物件を選択するのね?




「次に誰かにざまぁをする時には、私がんばって、ざまぁしたよ!と言えるような力をつけてくるから」


 エヴァは別れる最後に、またワケわかんないこと言い出して。
 がんばって、ざまぁをする?


 ……貴女がそう言うのなら、その時はお手並み拝見?させていただきますけれど笑





 貴女は貴女の思うように、生きて。
 エヴァンジェリン・マッカラム・ロドリー。


 貴女は頭を上げて、胸を張って、背筋を伸ばして、ひとりで立つ。



 悪役令嬢、一時事故物件令嬢。
 その後、再び悪役令嬢──


 もうそんな肩書きは、気にしない。



 貴女は大きく一歩を踏み出した。






   おわり