遠目にはただ黒く見えていたパフェだが。

 近くでライトが当たると、艶やかに(きら)めく。

 しかも、真上から見ると、濃い紫の大輪の花がグラスいっぱいに花開いていた。

「黒に近い紫のエディブルフラワーです」

 凍える真っ黒な海に沈む大輪の花。

 その美しさに会場がどよめいた。

 つるんとした凍った水面のようなゼリーから紫の花をすくい出す。

「珈琲だ」

 黒い部分は濃い珈琲ゼリーで。

 紫の花は甘く、ちょっと酸っぱく、シャリシャリとしていた。

 パフェのグラスに触れている外周部分はすべて、このつるんとした黒いゼリーなのだが。

 深海にもぐるように食べ進むと、中身は違っていた。