「田中竜王、強すぎて、『盤上の死神』と呼ばれていると聞いたので。
 死神と対戦すると、絶望するなあと思って、名付けてみました」

 なんだ、そういうことか、と田中がホッとしたとき、めぐるが言った。

「ちなみに、スイーツの中身の方は、田中竜王をイメージした物を詰め込んでいます」

 ――俺をイメージッ!?

「さあ、竜王。
 お召し上がりくださいっ」

 めぐると司会が芝居がかった調子で言い、田中は手元を小型カメラで映し出される。

 ……なぜ、俺をイメージして、暗黒で真っ黒なんだ。

 腹黒なのは、俺より、久門とか……。

 いや、あいつはなにも考えてないな。

 少なくとも、黒木田の方が腹黒だぞ。

 めぐるの自分に対するイメージが気になり、将棋を指すときもそんな風にはならないのに、長いガラス製のスプーンを持つ手が震える。