「……好きだよ」

「そうかー。
 じゃあ、また今度、対局するときも、フルーツあるといいねー」

「え……」

 久門はなにも考えていないようだった。

 なにも考えずに、これから先、健が将棋の世界に戻ってきて、また対局する未来が当然であるかのように言う。

 健は、
「……そうだな」
と久門に向けるにしては、珍しい笑顔を見せた。

 ……久門、たまにはいいこと言うじゃないか、と田中が思ったとき。

 待て、のきかない久門が、
「ねえこれ、もう食べていい?」
と運ばれてきた暗黒のパフェを指差した。