ステージ左下のテントから対局を眺めているめぐるのところに、ルカがやってきた。
「どうよ。
イケメン棋士二人があんたを賭けて戦ってるの」
「……私なんて賭けてないよ。
っていうか、勝負がはじまったら、二人とも、私のことなんて頭にないと思うよ」
とめぐるは盤上だけを見つめている田中を見る。
「あんたも一旦、お菓子作り出したら、他のこと、頭にないでしょう」
そうかもね、とめぐるは認めた。
「この間の城作ってるときとか。
構想練ってるときは完全に奥深い森の中に住んでたし」
そんなことを言っている間に、黒木田が投了した。
「あらら。
勝負めしもスイーツもいらなかったじゃない。
田中竜王のスランプってなんなのかしらね。
――あんたと同じなんじゃないの?」
ステージを見ながら言うルカを、え? と振り向く。