田中は頭を深々と下げためぐるの姿を目に焼き付けたあとで歩き出す。

 横を歩く黒木田が言った。

「今日はお祭りでの対局だが、俺は本気で行かせてもらう」

「当たり前だ。
 俺もだ」

「……ところで、どちらかがご当地メニューを食べるべきだと思うんだが」

「……お前、わりとその地方の物を好んで食べてるじゃないか。
 遠慮せずに食べろ」

「お前こそ、いつも手堅い物を選んでるじゃないか。
 めぐるんはなんだか不思議な物を作ってきそうだぞ。

 体調のためにもご当地スイーツを食べろ」

 いや、あいつ、ああ見えて、天才パティシエだからな。