「田中竜王に気づかなかったんですよね~」

「……そんなことって、あります?」

 あの長身であれだけのイケメンで。

 無骨な感じではあるけど、すごいオーラを放っている田中さんに気づかないとかあるんですか、とめぐるは思う。

 私なんて、田中さんが点のようにしかテレビに映ってないときでもわかるし。

「あ」
 って遠くから聞こえただけで、田中さんがいるってわかるのに。

「いや~、よく似てるなあ、とは思ったんですが。
 あなたに向かって、ありえないくらい優しく笑っていたので。

 めぐる先生には、対局中とは全然違う顔を見せるんですね」

「……俺もめぐるんには、対局中とは違う顔を見せるぞ」

 黒木田はキリッとしてみせた。

 ……ふだんより顔つきが厳しくなった。