二人でどこか出かけたりしてみたいなーと、お互いぼんやり思っていた。

 ふと、呑み屋街から視線を上げると、夜空に月が見えた。

 高いビルの陰にちょっと顔を覗かせている白い月を見たとき、二人とも、何故かちょっと気が大きくなった。

「今度、どこかに――」

「どこかに行きませんか?
 気分転換に」

 田中は、ただ、どこかに行かないか? と言おうとしただけだった。

 だから、何故ですか? とか問われたら、答えられないところだった。

 だから、めぐるが、スランプの気分転換のために出かけよう、みたいに言ってくれて助かった。

 よかった。
 こいつが言ってくれて、と思いながら、田中は訊いてみた。

「どこに行きたい?」