私立中学に行っても放送委員になって、いろいろ流してんのかなあ、とたまに思い出すくらいには、いろいろ推していた。

「誰も聴いたことないって曲が多かったんですけど。

 ずいぶんあとになって、その頃、急に売れてきた人の昔の曲がテレビで流れたとき。

 あれっ?
 なんか聴き覚えがあるなあって思って。

 よく思い出してみたら、安元さんが昔、しつこく流してた曲だったんですよ。

 すごいなあって思って」

 そこで、めぐるは思い出す。

 自分も三木家の話を聞いて、推しについて考えたことを――。

 私の推し、誰なんだろう。

 近頃、尊敬している人は、田中さんなんだが。

 将棋は『にーろくふ』しかわからないのに、田中さんを推しとか言って、いいものだろうか、とあのとき、思ったんだった。

「……俺の推しは」

 田中はそこで黙る。