イチョウの一枚板のカウンターの端の方に二人は座っていた。

 スッポンの茶碗蒸しで一杯やりながら、めぐるは言う。

「『えっ?
  そんなに出してくれるの?』って安元さんに言ったら、

『あんたむしろ、日本での知名度の方が低いから。
 巻頭特集とか表紙に載ったりとかして、名前が売れるよう、頑張るのねっ。

 そしたら、きっといい仕事も舞い込むわよっ』って」

 奥から覗いた雄嵩が、
「なにあれ?
 喝入れにきたの?」
と笑っていたが、田中も同じようなことを言っていた。

 そして、田中は、
「『絶望のピスタチオ』か。
 ピスタチオ、女子は好きなんだろうけどな」
と呟く。

 嫌いなんですか、ピスタチオ。