思いがけず、焼肉が食べられて、めぐるは浮かれていた。

「わあ、いろんなメニューがありますね~」

 厚みのある使い捨てのおてふきで手を拭きながら、黒板以外にも店内のあちこちに貼られているメニューを眺めていたが。

 結局、頼んだのは肉ばかりだった。

 タン、上カルビ、上ロース、ハラミ……。

「いろんなメニュー、ある必要あったか?」
と田中は言うが。

「じゃあ、次、なんにします?」
とトングで肉を返しながら言うと、

「……上カルビ、美味かったな」
とやはり言う。

 結局、上カルビを頼んだ。