「また、下手なサインを書いてしまいました」
帰り道、めぐるは、そんなことを呟きながら、おのれの両手を見つめていた。
またつまらぬものを斬ってしまったみたいなことを言っている……と思いながら、田中は一緒に歩いて帰る。
帰り際、めぐるは店の人や客たちにねだられて、サインを書いていた。
もちろん、田中も書かされた。
自分が何者か知っていて、三木家などは黙ってくれていたようなのだが。
他の人たちにサインを書いていると、三木家も、
「じゃあ、私も」
と言ってきた。
女子大生たちも、
「じゃあ、私たちも。
すみません」
と言ってきたので、サインしたが。
彼女らは『田中一郎』という名前を見て、
「誰?」
と言っていた……。