まるで雇われている従業員のように店内を掃除しているのが、ここのオーナーだ。

 最初会ったとき、フライドチキンを売る仕事の人かと思った。

 あの店の前に立っているおじさんそっくりの外見だからだ。

「あ、オーナー。
 そこ、あとで俺がやりますから」
と言いながら、まだ健はスマホの画面の上で忙しく指をすべらせている。

「今、大事なとこなんで」

 おい、ホスト。
 大事なの、そっちか、と思った気配を感じ、健は顔も上げずに、

「これで俺の運命が決まるんだ。
 時間が勝負なんだよ」
と真顔で言う。

 格好いいキメ顔だったが、使うところが違うと思うぞ、ホスト……。