案の定、本当は彼岸花部分を噛んだとき、もっとシャリッとする感じにしたかった、と熱く語っていためぐるの表情や声が頭を駆け巡る。

 ……なんでこんなにあいつの言動を思い出すんだろうな。

 会わなくなっても、鮮明に絶望のタヌキの目が蘇るんだが。

 しかも、あのタヌキの目を思い出しても、最近、ゾッとしないのだ。

 ゾッとしないどころか、なんていうか……

 なんていうか……。

「田中さん、田中さん」
と声をかけられる。

 しまった。
 時間だ。