結果として、田中に『にーろくふ』は焼きついていた。

 ――今日は、『にーろくふ』から始めるつもりはなかったのにっ。

 それも、『2六歩』とかではなく、めぐるのあの、ちょっと抜けたような、それでいて、心地のよい声で、

「にーろくふ」
と脳に響いてくるのだ。

 めぐるの呪いだっ、と田中は怯える。

 ……だが、もし負ければ、めぐるは責任を感じることだろう。