「君が伝説の和菓子職人の人?」
と久門に手を握られる。

「……いや、和菓子職人じゃなくて、元パティシエなんですが」

「よかった。
 僕、洋菓子の方が好きなんだよね」

 そうですか。

「僕も依頼していい?」
「えっ」

 久門は人懐こい笑顔を浮かべて言う。

「『絶対、田中に勝てる菓子』を作ってください」

「……そ、そんなものはありません」