……上の空で散歩している田中さんといい、棋士ってこんな人ばっかりなんだろうかな。

 一日中、将棋のこと考えてるのかもしれないな。

 私が一日中、なに見てもお菓子のこと考えてるみたいに、とめぐるは思う。

「一番嫌な奴が現れた」

 ぼそりとめぐるの側で健が言う。

「え?」

「田中はさー、こいつが苦手なんだよ」

 ああ……と思わず頷いてしまったが、将棋の上での話だったらしい。

 いや、キャラ的にも合わなさそうだなと思ったんだが……。

「田中の方が技量は上のはずなのに、こいつを前にすると調子を崩すみたいで」

 確かになにやら、ペースに呑み込まれそうですね。

 今も呑み込まれて、オムライスを頼まれされている……と思いながら、めぐるは見ていた。

 久門が言う。