「……複雑にすると、二度と同じものを書けそうにない」
と田中は白状する。

 いや、対局の流れは全部覚えてるのに?

「その点、僕は将棋は八段だけど。
 書道は十段だよっ」

「書道家になれよ……」
と健が言う。

「ははは、相変わらず、久門くんは元気がいいねえ。
 うらやましいよ、その体力。

 最近もう対局しんどくてさ。
 オムライス」
と相変わらず、メニューを見もせず、師匠が言う。