「なんでここにいる? 久門(ひさかど)
と田中がその男に訊いた。

「食堂だから」

 お腹すいたから、と久門はごもっともなことを言う。

「……めぐるとなんの話をしてたんだ?」

「え?
 お前のサインが下手な話」

 田中がこちら見る気配がしたので、めぐるは視線をそらした。

「サインなんだからさー。
 いっそ、もっとぐしゃぐしゃっと書いてもいいんじゃない?

 そしたら、字が上手いか下手かなんてわかんないじゃん」
と久門はアドバイスをはじめる。