出来る女風の装いのその女性は身を乗り出してショーケースを眺め、
「……スランプ中に慟哭とか笑えないわね」
と呟く。

「あんたもスランプ中でしょう。
 なに和菓子なんて売ってるのよ、天花めぐる」

「えっ?
 私をご存知なんですか?」

 女は黙った。

「……私、あんたの小学校の同級生、安元(やすもと)ルカ」

「あ~、安元さん。
 放送委員で、いっつもすっごいマイナーな曲流してたっ」

「どうでもいいこと覚えてるわね」
と言われたが、無事に思い出せてホッとしていた。

 女の人は服装と化粧で全然変わっちゃうからな~と苦笑いしながら、
「久しぶりだね~」
と言って、

「なにも久しぶりじゃないわよ。
 私、この間まで、あんたがエッセイ連載してた雑誌で編集やってるんだけどっ?」
とキレられる。