あの田中御用達の和菓子屋ということで、評判になっためぐるの実家だったが。

 田中の師匠は、
「……私は長年通っていたんたが。
 田中くんが通いはじめると評判になるんだねえ」
と自虐的に呟いていたらしい。

「この店に、田中竜王が現れたそうね」

 めぐるが店番をしていたとき、いきなりそんなことを言いながら現れた女がいたので、めぐるは、ファンタジーの世界に迷い込んだかと思った。

 あ~、竜王って、田中さんのことか~と気づき、

「いらっしゃいませ~。
 田中さ……、田中竜王がお好みなのは、この『慟哭』ですよ」

 めぐる作『慟哭』は店の新商品になっていた。