「ありがとうございました。
 お疲れ様でした」

 田中は店の戸締りまで付き合ってくれた。

「いや、いろいろすまなかったな」

「いえ、おかげで少し吹っ切れました」

 自分で味をなくして、自分でまたつけるという愚行を犯しただけなのだが。

 自分にとってのお菓子ってなんなのか、少し思い出したような気がしていた。

 めぐるは、コト、と田中の前に白く四角い陶器の皿を置く。

 和菓子がひとつ、載っている。

 透明な葛の皮で包まれた黒い鬼灯(ほおずき)のような餡。