無になれる菓子、という深淵に挑み、めぐるは負けた。

「いや、負けてよかったのでは……」
と雄嵩には言われたが。

「なんか、コンテストで負けたときと違って、すがすがしい負け方です。
 やっぱり、お菓子は人の心を動かして、ナンボですよっ」

 めぐるは原点に返り、一から、いろいろ工夫してみた。

 お客様にお喜びいただけるお菓子になるように。

 味のないねりきりを甘い寒天で包んでみたり。

 甘いカラフルなねりきりを作って、そぼろ状にして飾ってみたり。

 見た目も美しくなるように、金箔や銀箔も使った。