「いや、それは、ねりきりに失礼だろ」
と言って、充則に、

 めぐるさんにも失礼では?
という顔をされる。

 田中はひとつ、ねりきりを手にとると、めぐるを真似て、無の表情を作ってみた。

 だが、すっと襖が開いて現れためぐるは、色のない目で、また木箱を置いていって、田中にも気づかない。

「いやー、お菓子にとりつかれてるみたいですね。
 まるで神がかった巫女さんみたいですよ。
 さすが、天才パティシエ」
と充則が満面の笑みで言う。

「……これ、和菓子だが」