「人の心を動かさないのって、意外と難しいんですね。

 君の作品には、心がない。
 君のお菓子を食べても、なんのビジョンも見えてこないし、感動しない、とか言うジャッジもいたんで、結構、楽勝かなと思ってたんですが」

「そんなこと言われるのか」

「ええ、まあ。
 いろんなことを言われますよ」

「気づかないうちにそういうストレスが溜まってたんじゃないのか。
 傷ついていないように見えて、傷ついていたとか」

「さあ?
 でも私、そもそも、人の話、あんまり聞いてないですからね」

「……聞いてなさそうだな」

 心ある審査員のコメントは聞いてやれ、と言われた。

「あ、そうだ。
 食べますか?

 今、私が心震えるお菓子」