「無になったおのれの顔を見ながら作ってみました。
 『絶望のタヌキ』です」

 可愛いっ、と健が喜ぶ。

 ねりきりで作られた茶色いタヌキの顔を手に取り、健が、
「なんか食べるのもったいないねーっ」
とはしゃいでいる。

「……心が動いてるじゃないか」
と田中が言う。

「おかしいですね。
 無の心で作ったんですが」

 師匠が、
「愛らしいタヌキだねえ。
 微笑ましい気持ちになるよ」
と言ってくれたが、田中はこわごわ絶望のタヌキを見ながら、

「……いや、黒目がでかくて無表情で怖いですよ」
と言っていた。