「黒い火焔型土器というか」

「そんな繊細な作りか……?」

 火焔型土器は、燃え盛る炎のような美しい装飾の縄文土器だ。

「タイトルは『慟哭』です」

「いや、慟哭されても……」

 心を動かすなと言ったろう、と言われる。

「お客様に対する(こび)もなく作ったら、心がそのまま表れてしまったみたいで。

 おそらく、これは湧き上がる悲しみの形なんでしょうね」

 お菓子に対する情熱を失った悲しみです、とめぐるは語った。

「これでは、ご不満のようですので、こちらで」

 コト、とめぐるはまた皿を出してくる。