「ああ、あれか」
と百合香もカウンターから、こちらを見る。

「お好み焼き」

 二人同時に言ってきた。

「お前のお好み焼き、まずい」

「どうやったら、ああなるんだ。
 天才パティシエール」

「混ぜなさすぎたのかなあ?」

「そういう問題じゃない。
 あれ食べたときのばあちゃんの顔、無だったよ」

「お前もな」
と百合香が雄嵩に言う。

「いや、顔が無になりたいんじゃなくて、心が無になりたいんだけど」

「心が無だから、顔も無になったんだよっ」
と雄嵩は激昂する。