なんだかんだで引き受けてしまった。

 だが、心を無にして、食べる人も無になるお菓子を作ってみるのは悪くないかもしれない、とめぐるは思う。

 らしくもなく高評価を得て、コンテストで優勝しつづけてしまったせいで、自分を見失ってしまっていたところもあるからだ。

「いい評価を受けようとか。
 人の心を動かそうとか思わないようにしよう。

 目指せ!
 食べた人の心を無にするお菓子!」

 そう準備中の店でめぐるが叫ぶと、カバンとスポーツバッグを手にした登校前の雄嵩が言う。

「作ったことあるじゃん。
 人の心を無にする料理なら」

 いや、お菓子だってば、とめぐるは振り向く。