おいしかろうが、まずかろうが。 見た瞬間になにも思わない菓子なんてない気がする、と思うめぐるに田中は言った。 「お互い、立ち直るのに、なにかのきっかけが必要だ」 それはそうですね。 「……天花めぐる。 お前を天才パティシエと見込んで、頼みがある」 いや、もうお菓子づくりはやめて帰ってきちゃったんで、元パティシエなんですけど……。 「俺の心に響かない菓子を作ってくれ」