「全然気づかなかった。尚、遼ちゃんと付き合えて嬉しそうだったから、嫌がらせされてるなんて知らなくて。尚を見て私も幸せだったから浮かれてた」






元はと言えば、車が危ない運転をしたから今に至るわけで、そうじゃなかったら向井さんも悔しい思いをしなくて済むし、朔も苦しまなくて済む。



そこまで遡ったところで、誰を恨んでも意味がないから、もう考えるのはやめた。





「千里もありがとう。誰も悪くないから、謝らないで。仕方ないことなんだよ。上手くいくばっかりなんて、ないしね」




そう。物事なんて上手くいくかどうかは運。上手くいかなくても、運だと思って引き下がるしかない。