「茅柴!?」 朔の焦って私の名前を呼ぶ声が聞こえて、足を止める。 誰にも出会わずに帰れたら、幸運だと思ったけど、そうはいかないよな。 「…尚ちゃん!?びしょ濡れじゃん!」 「何があった」 「……別に」 「言え」 思わず従ってしまいそうになる朔の迫力も、今日は響かない。 向井さんのことは口にしたくない。巻き込みたくない。