様子がおかしい。


向井さんと知り合いなんだろうか。混乱している様子で、口をパクパクさせて何か言いたそう。




「…その人、妹が居るとか言ってなかったかな?」


「何も聞いてない。見たことがあるって図書室で会話しただけだし、画鋲入れられた理由も教えてもらえなかった」


「尚ちゃん。その人、僕知ってるよ」




矢吹くんが足を止めたから、私も同じように止まると、今の朔には聞かせたくない内容を口にした。




「向井夏実は、遼太郎と交通事故に遭って亡くなった子のお姉さんだよ」