ただ歩き回っただけで、今日は勉強をしにくる生徒も、本を返しに来る生徒も居ない。


嵐の前の静けさってこういうことなのかなってぐらい、本当に静か。


私の足音が図書室に鳴り響いて、このまま誰も来なさそうだったので、早いけど戸締まりの準備でもしようかと、窓を閉めて回った。




「こんにちは…」




こういう時に限って、人って引き寄せられるんだよね。


三年生らしきお姉さんが、本を一冊持って入ってきた。


胸あたりまで伸びている少し茶色がかった髪を緩く巻いて、柑橘系のいい香りがする香水を身に纏った、清潔感漂う綺麗なお姉さん。