「…ごめん、今の忘れて。私、どうかしてる」





右に寄せた椅子を戻そうとしたけど、朔が私の肩を抱いたことで止められた。


近かった距離がさらに近くなって、二人の顔がぐっと近づく。




「茅柴は案外、束縛系?良いね。俺、そういうの好き。愛されてるって思うよ」


「いや、そういうわけじゃなくて…」


「素直になりなよ。気になるんでしょ?俺が学校に来るまで何してたか」





授業中ということもあり、先生に聞こえないように小声で話すし、距離もすでに近いから朔のハスキーな声が、鼓動を早くさせた。



知りたい。朔が遅かった理由。


でも束縛はしたくない。私も束縛は多分嫌だから。




「良い、聞かない。学校までの道が混んでたんだよね?だから遅かったんだよ…」