ポケットマネーで買っておいたワンランク上のトアルコトラジャ。実は彼のために密かに用意しておいたのだ。

「へえ、それは楽しみ」

 にこにこと微笑む航輝の笑顔は本当に素敵。

 航輝さんのお母様はどんな方なんだろう。美しくて有名なCAだったというのだから、あの赤い香水瓶が似合うような美人に違いない。

「子どもたちは元気?」

「はい。おととい電話をしたときとまったく変わらず元気ですよ」

「それはよかった」

 言葉とは裏腹に彼は盛大なため息をつく。

「コーヒーを飲んだら、今日は帰るね。子どもたちの顔を見たら絶対に帰れなくなっちゃうし。お土産はいったん預かっておいてくれるか」

 がっくりとしょげる様子に、思わずクスッと笑う。

「はい。わかりました」

 航輝さんは確か二週間の休みのはず。もしかしたら我が家にずっと泊まっていくのかも? なんてドキドキしていたのに、それはないようだ。